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<title>HOSPITAL</title>
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<modified>2011-03-17T16:31:25Z</modified>
<tagline>ホスピタルは、あなたの健康と、あなたがこのウェブサイトをエンジョイすることを願っています。</tagline>
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<title>世界の終わりが終わったら2</title>
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<summary type="text/plain">世界はぜんぜん終わらなかった。いつまでたってもあった。
そして、僕たちも終わらな...</summary>
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<![CDATA[<p>世界はぜんぜん終わらなかった。いつまでたってもあった。<br />
そして、僕たちも終わらなかった。いつまでたっても元気に暮らしていた。<br />
むしろ、以前よりも増して元気に暮らしているのだった。</p>

<p>だって、そりゃそうだ。世界が終わると決まったあの日から、僕たちはずっとうまくやってきた。より快適に、より幸せに、世界の終わりを迎えることを目指して、僕らは本当にうまいやり方でここまできた。無駄なものを捨て、必要なものだけを揃えた。ない場所にはある場所から、ない人にはある人から。<br />
そんなふうに、誰もが一緒に、素晴らしい世界の終わりを目指した。</p>

<p>争いがなくなった。意地悪もなくなったし、嫉妬や泥棒や無神経がなくなった。<br />
もうこの世界には、戦争も、民族差別も、調停離婚も、混雑した電車の中でのスリも、その混雑した電車の降り口をふさいで頑なに立ち続ける人も、存在しなかった。<br />
全ての人々に、ゆとりと余裕があったから、混雑した電車ももう存在しなかった。</p>

<p>僕たちは以前よりずっと仲良しになっていた。<br />
それは全部、世界の終わりのせいだ。<br />
この世界の全ての場所で、全ての人々におとずれる世界の終わり。<br />
だってそれは、有史以来、僕らがはじめて平等に何かを与えられる瞬間なのだから。</p>

<p>でも、世界はぜんぜんおわらなかった。世界はまったくしぶとかった。</p>

<p>思えば、世界の終わりがはじまったころ、僕たちの話題は世界の終わりで持ちきりだった。<br />
どんなふうに世界が終わるかな？とか。世界が終わるとき、何してる？とか。<br />
それで、もちろん、僕らの好きなロックやスケベや恋の話もそこに交じってくるわけで。<br />
世界の終わりに聞きたい曲は何かとか、世界の終わりの前にいかに童貞を捨てるかだとか、そんな他愛もない話しがあって、それから、ある友達はこんな宣言をした。</p>

<p>世界が終わる前に、好きな女の子に告白をする。<br />
だって。</p>

<p>世界が終わる前の彼なら、きっとできやしなかったよ。なにせひどい奥手の照れ屋さんの硬派君だったからね。でもそいつはほんとにそれをやってのけた。彼は変わった。これも全部、世界の終わりのせいだ。<br />
結局、彼はふられてしまったけどね。</p>

<p>それであれからずいぶん時がたったけど、世界はまだ終わっていない。<br />
あんなにちやほやもてはやされた世界の終わりも、いまはもう僕らの話題になることも少なくなった。<br />
本当にずいぶん時がたってしまったんだ。<br />
件の、好きな女の子にふられたあいつも、いまはまた新しく好きな女の子ができるくらいに。そして今や、あいつってば、僕らが、また告白しろよ、なんてけしかけても、こう言って嫌がるんだ。やだね、世界の終わる前にふられるなんて、そんな最悪な世界の終わりはないよ、って。<br />
よっぽど好きなんだろうね。ってのが、僕の見解。</p>

<p>そんなふうに過ごしている僕たちだけど、世界の終わりのことを完全に忘れているわけではないよ。いつだって頭の片隅には、世界の終わりが横たわっていて、心の底には、世界の終わりが沈んでいる。そして、どんなに時がたっても、世界はあいからず、以前よりもずっとうまくまわっている。ストレスだとか、絶望だとか、自殺だとかは、もう死語だよ。僕たちの終わるはずの世界は、いつまでたっても、美しい秩序と均衡を保っているのだ。<br />
ただすこし、語るべきことがみつからなくて、退屈になってきてもいるんだけれど。</p>

<p>そこで最近、僕たちは新しいご機嫌な話題をみつけた。<br />
それは、世界の終わりが終わったら、何をするかってこと。<br />
これを語るときのみんなの表情は明るい。</p>

<p>世界の終わりが終わったら、旅にでたい、とか、美味しいものが食べたい、とか。<br />
みんな、いまだってできることばかり言うんだけど、<br />
なぜか全てが特別なことのように、甘美な響きをもって聞こえてしまう。<br />
それは、きっと、世界の終わりのことなんか、本当は僕たちは大嫌いで、<br />
世界の終わりなんかなくなってしまえばいいのに、って、心から願っているからなんだろうね。</p>

<p>だけども世界の終わりはそこにある。<br />
だから僕たちは、世界の終わりが終わるのを待つことにする。</p>

<p>さて、それで、世界の終わりが終わったら、僕は何しようか。<br />
実は、その答えは決まっている。<br />
たぶん、まずは散髪をして、お気に入りの洋服を着て、ちょっとしたプレゼントなんかを買いにいく。そして、そこから先は内緒なのさ。</p>

<p>え、教えてくれって？だめだよそんなの。だって恥ずかしいじゃない。<br />
え？なに？･･･いや、ち、ちがうよ。だって、ほら、あれは、だから、僕の友人のはなしであって、僕のことじゃない。いや、ほんと。やめてよ。ちがうってばさ。もう、ほんとだって。うんうん、わかった。じゃあ、世界の終わりが終わったら、僕が何をするかって、そのとき君に教えてあげるよ。きっと。約束さ。楽しみに待っててよ。<br />
じゃあね。おやすみ。またね。</p>

<p>世界の終わりが終わったら、きっと君に会いに行くよ。</p>]]>

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<title>嘆き&apos;nドラム</title>
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<modified>2011-02-27T17:36:37Z</modified>
<issued>2011-02-27T17:28:20Z</issued>
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<summary type="text/plain">結婚しようと言ったその日に彼女は死んでしまって、悲しい俺はドラムを買った。仕事を...</summary>
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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>結婚しようと言ったその日に彼女は死んでしまって、悲しい俺はドラムを買った。仕事をやめて、アパートを引きはらって、人里離れた山小屋でひとり、ドラムを叩いた。叩き方なぞ知らなかったから、ただ出鱈目に闇雲に叩いた。俺は悲しかった。</p>

<p>出鱈目に闇雲に叩くのにも飽きたので、いろいろと工夫するようにもなった。右手左手右足左足をいろんな順番にいろんなふうにしていろんなリズムで叩いた。やがて、俺だけの叩き方をみつけた。とってもきもちのよい音がする叩き方だ。そいつが上手にきまると、射精するほどのきもちよさだ。</p>

<p>ドラムを担いで山を降りた。街のみんなに俺のドラムを聞かせてやりたかった。大きな駅前の広場で激しくドラムを叩いた。通行人たちは皆、股間を押さえて喜びの声をあげた。嬉しかった俺は、さらに激しくドラムを叩いた。人々はさらに喜びの声があげた。ぶったおれた。のたうちまわった。泡を吹いた。そして、死んだ。</p>

<p>俺は自首をして警察につかまった。ドラムはとりあげられた。ドラムスティックもとりあげられた。牢屋にいれられた。丸坊主にされた。くさい飯くった。そのころ、世界戦争がはじまっていた。</p>

<p>ある日、俺は牢屋をだされ、窓のない部屋に閉じこめられた。部屋にはドラムとドラムスティックとメモ。メモには、「好きなだけドラムを叩け」と書いてあった。天井からはマイクがぶら下がっていた。</p>

<p>俺は嬉しかった。ドラムを好きなだけ叩いた。寝食忘れて、夢中で叩いた。そんな俺のドラムの音は、世界各地の戦場で放送された。たくさんの兵士が、股間をおさえて笑顔で死んだ。</p>

<p>やがて、戦争が終わって、俺の国は世界で一番強い国となった。俺のドラムは国の英雄となった。大統領は俺のドラムに勲章を与えた。国旗にドラムの絵が加えられた。国会前の広場に、俺のドラムが飾られた。俺は軍に管理されて、人々の前に出ることはなかった。</p>

<p>俺はドラムとドラムスティックのない施設に閉じこめられた。国はもはや俺のドラムを必要としなかった。すでにたっぷり録音していたから。人々は俺のドラムの音に恐れながら暮らした。時折、軍から流出した録音データが、自殺やテロリズムに使われた。</p>

<p>そのうちに、反政府デモがおきた。国はすぐに弾圧に乗り出した。たくさんの人々が集まる場所で、俺のドラムの音が流れた。人々は、片手で股間を押さえ、残る片手で拳を振り上げながら、笑顔で死んだ。大統領は手を叩いて喜んだ。</p>

<p>それでもデモは続いた。絶対に俺のドラムの音を聞くまいと、連中は、こぞって焼けた鉄の棒を耳の穴につっこんだ。いつしか、この国で、俺のドラムの音が聞けるのは、俺と、政府側の人間だけになっていた。そして、政府は陥落した。</p>

<p>俺は施設から解放された。街では祝砲や歓声のないパレードが静かに続いていた。人々はモバイルPCやスマートフォンで喜びをわかちあっていた。たどり着いた国会前の広場では、ちょうど何人かの若者たちが、俺のドラムをぶっ壊そうとしていた。俺は若者たちに泣いてすがりついて、叩かせてくれと懇願した。</p>

<p>さあどうぞ、と、若者のひとりがジェスチャーで俺に促した。ドラムスティックをどこからか持ってきてくれた。俺は俺のやり方で、思いきりドラムを叩いた。誰にも聞こえないはずだから、なんの気兼ねもなく叩いた。夢中で叩いて、ふと我に返ると、俺は大勢の人々に囲まれていた。皆、腹を抱えて笑い転げていた。</p>

<p>俺の叩き方があまりに滑稽だったからだ。俺がみつけた俺のドラムの叩き方はひどく人々に面白がられるようだ。皆の笑いがとまらない。どんどん人が集まってくる。何万人ってくらいの数だ。空にはヘリコプターが飛んでいる。軍じゃない。ようやく危険のなくなったこの国に、外国の報道陣たちが集まってきたんだ。カメラや集音マイクを担いだ連中が、こっちに向かって走ってくるのがみえる。よう、はやくここに来いよ。みんなの笑顔を世界に伝えてくれよ。俺はいっそうはりきってドラムを叩く。</p>]]>

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<title>街路徘徊</title>
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<summary type="text/plain">猛暑も後退した初秋の街路をうきうき気分で徘徊しよう。
もちろん身につけるものなん...</summary>
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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>猛暑も後退した初秋の街路をうきうき気分で徘徊しよう。<br />
もちろん身につけるものなんて何も無いのさ。<br />
布切れ一枚だって許さない。<br />
何もつけないことがすべての景色を変えてくれるのだから。<br />
めがねもはずそう。<br />
薄ぼんやりと街灯がけぶってみるね。<br />
そう、僕はもともと目が良いほうではない。<br />
だから、不思議の国を歩いているような、なんだかふわふわした気持ちのまま歩くことが出来るんだ。<br />
現実僕は社会人だ。<br />
昼間は多くのしがらみに縛られたまま仕事をしている。<br />
そうしたものが邪魔だなんて感じたことは無い。<br />
鎖だなんて、まったく思ったことはないんだ。<br />
けど、生まれたままの姿で初秋の街路を闊歩してみると、それらすべてが僕にとって邪魔なものだったことに気づく。<br />
みんなも試してみてごらん。<br />
会社も学校も休んでしまって、何も考えないで、電話もメールも一切ゴミ箱に捨てた気分になって河原を一人で歩いてごらんよ。<br />
人に会うのが億劫だったら山の中に迷い込んでごらん。<br />
危険の無い山なんて少しの努力ですぐ身近にあるんだから。<br />
すると気づくよ、ログオフした自分に。<br />
いろんな厄介な関連付けと一切手を切るんだよ。<br />
ほんとに手を切ると後がほんとにやっかいだからさ、そこは常識人のたしなみで工夫するとしても、いろんなことが見えてくる。<br />
フレームを外す、ってことかな。<br />
会社帰りにプールによって1,000m泳ぐのも、テニスクラブに身をやつすのも、行きつけの居酒屋に引っ掛るのも、学校帰りの友達の家も、ゲーセンも、みんな簡易な形なんだ。<br />
自分が自分でいられるためのね。</p>

<p><br />
僕の場合はバランスがうまく取れなくて、ブリーフにTシャツ程度で済ませられるところが、全開でいっちゃった。<br />
めがねもないよ。<br />
もちろん、腕時計なんてはなからないさ。<br />
社会人であるべき属性を一つも身につけず、僕は街路を徘徊したよ。<br />
景色は本当にきれいだった。<br />
雨上がりの湿った空気は僕のさっきまでささくれ立っていた心をやさしくなでてくれた。<br />
店の看板や団欒の明かりは目の悪さから乱反射してみえて、それは本当に素敵な物語の中の光に見えた。<br />
闇の中で数多くの光の絵の具がにじんでいるようにね。<br />
声が色々と聞こえてくる。<br />
罵声を浴びせられているようでもあるし、嬌声のようでもある。</p>

<p>しがらみを外しちゃいなよ。<br />
僕みたいなはずしかたをする前に、もっといろんな方法があるみたいだから。<br />
すごく大切なことだから、歌を歌うように考えてみて欲しいな。<br />
親友と時を過ごすように。<br />
家族と眠りにつくように。<br />
さよなら。<br />
おやすみなさい。</p>]]>

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<title>カマボコ</title>
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<summary type="text/plain">僕が冷蔵庫の中においた蒲鉾は実は僕自身だった。

ナイロン袋はまだ外気を含んでい...</summary>
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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>僕が冷蔵庫の中においた蒲鉾は実は僕自身だった。</p>

<p>ナイロン袋はまだ外気を含んでいてそれなりに暖かかったのに、冷気が残酷にも侵入してくる。<br />
僕は徐々に冷気に侵入され冷たくなっていく。<br />
ああ、冷たい。このままだと死んじゃう。<br />
そう思っても何も知らずに遊んでいる息子と妻には説明のしようがない。<br />
最近買ったアンパンマンのおもちゃはひどくお気に入りだったようで、アンパンマンとバイキンマン、どきんちゃんがつながっているヒモの先端を息子は一心不乱にひっぱっている。<br />
がらがらがらとオトを立てながらおもちゃは気が動転している僕の足元を来たり行ったりしている。<br />
妻は頭をなでながら最近言葉を話し始めた息子のことがかわいくてしかたないらしく、いろいろと話かけたりしている。</p>

<p>久しく音信が途絶えていた友人と会って食事をした帰りだった。<br />
彼には恋人ができていて彼女同席のもと三人で、ここ数年に互いが経験したことをいろいろと話した。<br />
二十歳前後に僕や彼が感じていたこと、人生に対しての向き合い方、今後の抱負。</p>

<p>柄にも無くお土産ということで彼は僕にナイロンの袋に包まれた蒲鉾を手渡したのだった。</p>

<p>僕は一途な人間だ。<br />
なにかにのめりこんだらそれ以外のことが目に入らないくらい熱中してしまう。<br />
生きていれば当然色々な人に出会うし、色々なものを手にする。<br />
形のあるものだけではない。</p>

<p>僕は形あるものをあまりにも軽んじてしまったのかもしれない。<br />
そういえば人に物をもらったとしても僕は喜べなかった。<br />
どこそこへ行ったときのお土産ってことで手渡されても僕はそういったものに対してものすごくさめていた。<br />
もらったまま車の中に放置してみたり、食品だったりすると無残で、なんかくさいなと思うとそれが十分発酵された状態で発見されたりなどだ。<br />
あまりにもモノに対しての執着が薄く、たとえば賞状だったりトロフィだったりに対してアレルギーがある。<br />
形に残らないものに対しての憧れが強く、手もとにおいておいてめでることができないタイプのものばかりである。</p>

<p>伴侶ができた。<br />
子供が出来た。<br />
家を建てる。<br />
車を買おう。</p>

<p>全部が味噌汁の味のように、僕の感覚を通り過ぎていくのであって、何一つ僕の手もとに形として残らない。</p>

<p>友人に恋人が出来た。<br />
就職した。<br />
別居した。</p>

<p>すべては感じられる味噌汁の味である。<br />
具のように具象性がない。</p>

<p><br />
大切な妻と息子が僕のほうを笑顔で気にしながら、新しいおもちゃと一所懸命格闘している。<br />
大切な大切な家族が幸福をかみ締めている脇で僕は真っ暗な冷蔵庫の中で少しずつ体温を奪われ、やがて冷たくなってしまう。<br />
冷たくなった蒲鉾をきっと僕は食べないのだと思う。<br />
冷たくなっていることにすら僕は気づかないのだと思う。<br />
なぜなら僕は形に興味がないから。<br />
僕という形ですらわからないまま終わるのだと思う。</p>]]>

</content>
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<title>いらっしゃいまふぇ</title>
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<modified>2008-05-06T14:22:52Z</modified>
<issued>2008-05-06T13:34:44Z</issued>
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<created>2008-05-06T13:34:44Z</created>
<summary type="text/plain">2年に渡る売り場スタッフとしての成果が認められ、異例のスピードでチーフとなった私...</summary>
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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>2年に渡る売り場スタッフとしての成果が認められ、異例のスピードでチーフとなった私にも、悩みがある。<br />
一年後輩で入ってきたショップスタッフ、里美のことだ。</p>

<p>一体彼女は奇をてらってそうしているのか、悪意があってそうしているのか。<br />
はたまた、人生の経過において、それを是正するチャンスが今まで一度も到来しなかったからなのか。<br />
あるいは、うがった見方をするならば、彼女の身体的な部分にその理由があるのか。<br />
私の部下の一人であり、ショップスタッフとしてはその”欠点”を除いてとても信頼でき、ずば抜けた才覚を発揮する里美は、来客したとき明るい表情と、すがすがしい声で、必ずこう接する。<br />
「いらっしゃいまふぇ」</p>

<p>「里美さん、いらっしゃいまふぇじゃなくて、ませ、よ」<br />
「え？」<br />
里美が、きょとんとして、こちらをみる。<br />
（え？じゃないわよ。私に何回言わせるの、この台詞。お客さんも、聞き違いかしら、くらいに思ってくれてるし、いいけれど、明らかに毎回よ）<br />
「いらっしゃいませ、よ」<br />
「なにをいまさら、チーフ、どうしたんですか？」</p>

<p>押し問答をしているうちに、来客はまったなしに押し寄せる。<br />
そのあわただしさに紛れ、きちんと話し合いを持ったことは一度もない。<br />
「いらっしゃいまふぇ」<br />
遠くでかすかに、彼女の接客が聞こえる。<br />
チーフという立場だが、私も一ショップスタッフである以上、完全なマネージメントの側に立つこともできず、さらには、里美の能力はこの売り場になくてはならないほどに完成度の高いものであり、スタッフ全員のいるまえで、あまつさえ顧客の面前で、ことさらに指摘することも憚られる。<br />
こんなときに中間管理職の微妙な身の上が顕在化するのだ。<br />
しかし、そうとばかりも言ってはいられないので、里美が接客をしている脇に「もう、まふぇだなんて、ねえ、お客さん、おかしいですねえ、ふふふ」とくちばしを挟んだりするのだが、問題となる”いらっしゃいまふぇ”から、話題はここ最近流行の色についてシフトしてしまっている状態だから、私の指摘のほうが場違いとなり、洋服選びに夢中なお客様から怪訝そうな目を向けられ、里美からは上司の意味不明な介入にどうしてよいのかという当惑をあらわにされ、結果的には部下の仕事の邪魔をしたチーフの行状が顕著化してしまうのである。</p>

<p>しかし、あきらかに、彼女は「いらっしゃいまふぇ」と言っている。<br />
さて、ここで、先ほども説明したように、私のような微妙な立場で、信頼のおける部下でもある里美にその間違いを正すとして、一体どのような手法がベターなのか、という問題がある。</p>

<p>仕事が終わり、後片付けをする里美の後ろから「今夜食事でもどうかしら」と声をかけるとしよう。<br />
一通りのオーダーを済ませ、乾杯。<br />
場を和ませる適当な話題をいくつかちりばめた後で、<br />
「いらっしゃいまふぇ、ではなくて、いらっしゃいませよね」<br />
と切り出したとしよう。<br />
仮に、里美の返答が、「あ、はい」<br />
だとしたら、私は里美にかなりの弱みを握られることになるのではないか。<br />
そもそも、わざわざ食事に誘っておいて、切り出すにはあまりにもお粗末な話題である。<br />
チーフとしての立場面目ともに、丸つぶれはまぬかれない。<br />
かといって、その他の接触ではなかなか自然にゆかないし、それでなくても前述の通り上手にかわされてしまうのだ。<br />
一体、どのように切り出したらよいのだろう。</p>

<p>夜、私なりに考え込んでいた。<br />
どうしたら、彼女のまふぇを自然に指摘してあげられ、その上で、しかるべきへ導いてあげられるのか。<br />
私が悩めば悩むほど、私は職場で浮いていくような気がする。<br />
チーフという立場に立ったことから、私は必要以上に気にしすぎているということだけなのかもしれない。<br />
もはや習慣となってしまっている一人きりの晩酌で、私は私なりの結論に達し、人は人、私は私。明日からは自分らしく、自分を表現していこうという明るい気持ちで就寝した。</p>

<p>開店と同時に、里美の「いらっしゃいまふぇ」に続き、私はいつもより明るく、そして朗らかに「いらっしゃいMoney」と挨拶した。<br />
まふぇと違いあきらかに聞き違いとは思えないらしく、来客は目に見えて戸惑う。<br />
中には不愉快な気持ちを隠そうともせず、そのままきびすを返す客もいる。<br />
なぜ、日本人的にぼかした「まふぇ」が許されて、そのまんまな「まねー」が許容されないのか。<br />
引いていく顧客の心理を、なんとかとらまえようと、必死で、「いらっしゃいMoney」と挨拶する。<br />
昨夜必死で組み立てた理論が、目の前でもろくも崩れ去っていくのを眺めながら、私は必死に「いらっしゃいまねー」と連呼するのだ。</p>]]>

</content>
</entry>
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<title>初体験</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://hospitale.org/archives/2007/10/post_259.html" />
<modified>2007-10-07T04:50:54Z</modified>
<issued>2007-10-07T04:29:52Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2007://1.474</id>
<created>2007-10-07T04:29:52Z</created>
<summary type="text/plain">あと数日で、夏休みが終わろうとしていた。
僕は彼女の部屋にいた。

始めよう。
...</summary>
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<name>hospital</name>


</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>あと数日で、夏休みが終わろうとしていた。<br />
僕は彼女の部屋にいた。</p>

<p>始めよう。<br />
と僕は言った。<br />
うん。<br />
と彼女が頷いた。</p>

<p>僕は彼女を抱きしめた。<br />
彼女を強く抱きしめた。<br />
彼女のことを強く想いながら。</p>

<p>きっと彼女も、<br />
そうしていたんだと思う。</p>

<p>やがて僕たちのからだは、宙を浮いた。</p>

<p>「ほんとうだった！」<br />
彼女が嬉しそうに言った。<br />
「うん。ほんとうだった」<br />
「ヤスコ先生の言ってたこと、ほんとうだったんだね」<br />
「うん」</p>

<p>ゆっくりと僕たちは浮かんでいく。<br />
僕たちの、本当のからだを残して。</p>

<p>「わ。天井にぶつかる」<br />
「大丈夫」</p>

<p>幽霊みたいになった僕たちのからだは、<br />
音もなく天井を通り抜ける。</p>

<p>「すごいすごい。すごいなノブくん」<br />
「うん。すごい」<br />
「どこまで飛べるのかな」<br />
「わからん」</p>

<p>抱き合ったぼくたちは上昇する。<br />
真っ暗な天井裏を、彼女のうちの瓦屋根を通り抜ける。<br />
僕たちはいま、空中にいて、彼女の家を見下ろしている。</p>

<p>「あ」<br />
「どうしたの、ノブくん？」<br />
「部屋の電気ついたまま」<br />
「いいのいいの。今日はお母さん、お婆ちゃんのうち行って帰ってこないし」</p>

<p>上昇は続く。<br />
夜空から見下ろす街の輪郭は段々と小さくなって、<br />
やがて光だけを残して闇へと沈む。<br />
見下ろす街の夜景は、逆立ちして眺めた星空みたい。</p>

<p>「あ。あれ。ノブくん、あれみて」<br />
「え」</p>

<p>大きな県道のある方角に、<br />
たくさんのカップルが浮かんでいるのがみえる。</p>

<p>「わー。飛んでる人たくさんいる」<br />
「うん。あのへんラブホテルがいっぱいあるから」<br />
「みんな知ってるんだね、空飛べるの」<br />
「うん」<br />
「でも、なんでみんな内緒にしてるのかな？」<br />
「わからん」<br />
「だって、わたし、セックスだってこないだまで知らなかった」<br />
「俺は四年生のときから知ってたよ。兄ちゃんがビデオ持ってたから」<br />
「お兄ちゃんエッチだ」<br />
「男はみんなもってるよ」<br />
「ノブくんももってるの？」<br />
「うん。こないだバスケ部の先輩にもらった」<br />
「バカ」</p>

<p>彼女が僕の頭を小突いた。<br />
その拍子に、それまで抱き合っていたぼくたちのからだが離れる。<br />
ふわりと僕より高く浮いていく彼女を引き寄せるために、<br />
僕は彼女の手を握る。</p>

<p>「空飛ぶの難しいな。ノブくん、練習しよ」<br />
「うん」</p>

<p>空を飛ぶのはそれほど難しくはなかった。<br />
一度コツさえつかめば、思いのままに飛ぶことが出来た。</p>

<p>上昇と下降。加速と失速。<br />
ジェットコースターが苦手のはずの僕が、<br />
不思議と恐怖を感じなかった。<br />
猛スピードでの方向転換も。<br />
地面めがけての急降下も。<br />
彼女がそばにいてくれさえいれば、<br />
なんにも怖くなかった。</p>

<p>「すごいな。すごいなノブくん。こんなのって本当にすごい」<br />
「うん。すごい。すごくすごい」<br />
「セックスよりずっとすごい」</p>

<p>空飛ぶ僕らは港を目指した。<br />
途中、いくつかのカップルとすれ違った。<br />
僕らはお互いに手をふっって、挨拶を交わした。<br />
普段歩く街中よりも、ずっと人々は優しい顔をしていた。</p>

<p>港の上空で僕たちは再び抱き合った。<br />
抱き合ったままの姿勢で、<br />
僕は海を、彼女は反対側の街を眺めた。</p>

<p>海の向こうの埋め立て地には、空港の灯りがみえた。<br />
街の向こうの山には、電飾でこの街の名前が浮かんでいた。<br />
僕らの隣には、赤く光るこの街のシンボルタワーがあった。</p>

<p>「ねえ」<br />
「うん」<br />
「この街好き？」<br />
「うん」<br />
「わたしも。ずっとこの街にいたかった…」</p>

<p>僕は何も言わず、<br />
彼女もそれ以上は何も言わなかった。<br />
空中に浮かんで、無言で抱き合う僕たちを、<br />
月だけがみていた。</p>

<p>「ねえ、ノブ君、次どこいこ？」<br />
「きまってるだろ」<br />
僕は月を指さした。</p>

<p>月に近づく。<br />
月の周囲にはたくさんのカップルが手を繋いで飛んでいる。<br />
老若男女。男同士、女同士で手を繋ぐ人たちだっている。<br />
無数のカップルが、月の周りにひとつの軌道を描く。<br />
僕らもその後について、月の周りを皆と同じ方向へと進み、<br />
ひとつの軌道の一部になる。<br />
真下にみる月の表面はテレビや写真で見たとおりにでこぼこで、<br />
遠くに見える地球もまた、テレビや写真で見たとおりに丸く、青い。</p>

<p>「ねえ、ノブ君。みんなどこいくかわかってる？」<br />
「わからん」<br />
「わたしわかる」<br />
「どこ？」<br />
「オリジナルラヴ。月の裏で会いましょう」</p>

<p>やがて前方を飛ぶカップルの群れが低空飛行を始め、<br />
ゆっくりと、やわらかに、その目的地へ着陸したとき、<br />
僕らは月の裏側を知る。</p>

<p>月の裏側は、大きな大きな公園だった。<br />
芝生があって、木々があって、小川もある。</p>

<p>「なんだ。ウサギはいないのね」<br />
「うん。でもカップルはたくさんいる」<br />
「いろんな人がいるね」<br />
「うん」<br />
いろんな人がいる。<br />
いろんな年齢のいろんな人種のいろんなカップルがいる。<br />
「お父さんとヤスコ先生もいるかも」と彼女が言う。</p>

<p>この夏の初めに、彼女のお父さんは、<br />
彼女の家庭教師だったヤスコ先生と一緒に、<br />
どこかに行ってしまった。</p>

<p>二人がいなくなる前のある日、<br />
ヤスコ先生は、駅前の喫茶店に僕たちを呼び出し、<br />
この秘密を教えてくれた。</p>

<p>本当に、本当に愛し合う二人は空を飛ぶことが出来るって。</p>

<p>冗談ではないかと思ったし、本当なんだろうとも思った。<br />
この世界には、キスやセックスよりも、「つきあう」や結婚よりも、<br />
好きだとか愛してるとか言うよりも、<br />
ずっと確実に愛を確かめ合う方法があって、<br />
それが空を飛ぶことなんだと、ヤスコ先生は僕たちに説明した。<br />
みんなそれを知っていて、みんなそれを秘密にしている。<br />
そろそろ僕たちは、それを知ってもいいのだとも、ヤスコ先生は言った。</p>

<p>カップルたちの大半が、芝生に寝そべり星空を眺めていた。<br />
僕らもそれに倣って、空いた場所に並んで寝そべった。<br />
そして手を繋いで、星空を眺めた。</p>

<p>月から眺める星空は、宇宙から眺める宇宙。<br />
星がとても近い。星がとてもたくさんある。星と闇がどこまでも広がっている。<br />
僕は宇宙の広さを知る。この世界の本当の広さを知る。<br />
そして、そんな世界で彼女と空を飛び、いま月にいることを想う。</p>

<p>そのときの感情をうまく言い表すことは出来ない。<br />
ただ本当に、本当に幸せだって気持ちは、<br />
こういう感じなんだってことを、初めて知った気がした。</p>

<p>「ノブくん、わたし分かった」<br />
「なにを？」<br />
「なんでみんな空飛べるの内緒にしてるのかわかった」<br />
そのときには僕も、その答えには気がついていた。<br />
「空飛べない人かわいそうだもん。空飛べる相手、みつけられない人かわいそうでしょ」<br />
「うん。そうだ。きっとそうだ」</p>

<p>月からの帰り道は、学校からの帰り道みたいに、他愛のないおしゃべりをした。<br />
クラスの誰かのことや、好きなバンドの新曲ことや、テレビドラマなんかのことを。<br />
そのとき僕たちは気がついた。<br />
もうどんなラブソングも、どんな恋愛ドラマも、ちょっぴり滑稽に思えてしまうだろうことを。<br />
その夜僕たちは、この世界の、本当を知ってしまったから。</p>

<p>やがて彼女のうちが近づくにつれ、次第に僕らの口数は減り、<br />
空飛ぶスピードもまた、次第にゆっくりとなっていった。</p>

<p>彼女のうちの、彼女の部屋の灯りがみえたころ、彼女が言った。<br />
「また会えるよね」<br />
「うん。きっと会えるよ」</p>

<p>また一緒に空を飛ぼうとは、彼女は言わなかったし、僕も言わなかった。<br />
僕らはわかっていたんだ。<br />
いつか僕は、彼女の以外の誰かと空を飛び、<br />
そして、彼女もまた、僕以外の誰かと空を飛ぶだろうことを。</p>

<p>窓から彼女の部屋を覗き込むと、<br />
抱き合ったままの僕たちの本当のからだが、<br />
僕たちの帰りを待っていた。</p>

<p>二学期が始まって、教室に彼女の姿はなかった。<br />
家庭の事情で、遠い街に引っ越したのだと、担任の先生がクラスのみんなに説明した。<br />
授業が始まる前の休み時間、クラス中は彼女の話題でもちきりだったけど、<br />
僕だけは知っていたから、ひとりでぼんやりと、窓の外の、青い空を眺めていた。<br />
いまも誰かが誰かと空を飛んでいるんだろうって、思いながら。</p>

<p>あれからずいぶんと時はたち、僕もずいぶんと歳をとった。<br />
5人の女性と交際をし、そのうちの3人とは空を飛んだが、もうしばらく空を飛んでいない。<br />
夏の終わりには、きまってあの夜のことを思い出す。<br />
そして月の綺麗な夜には、無性に誰かと、空を飛びたくなったりもする。<br />
無性に誰かと、月に行きたくなったりする。<br />
</p>]]>

</content>
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<title>ずけずけと</title>
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<modified>2007-09-06T21:12:38Z</modified>
<issued>2007-09-06T19:59:13Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2007://1.471</id>
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<summary type="text/plain">ずけずけと言ってくれる。

喫煙スペースで久方ぶりの喫煙を楽しんでいるところに、...</summary>
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<name>hospital</name>


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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>ずけずけと言ってくれる。</p>

<p>喫煙スペースで久方ぶりの喫煙を楽しんでいるところに、最初に｢火を貸してくれますか」から始まって、「このライターもらってもいいですか」<br />
「タバコもらってもいいですか」<br />
「この後めしおごってもらってもいい？」<br />
「ちょっとコンビニでチョコ買ってきて」<br />
「今日家に泊めてよ」<br />
と要求がエスカレートしていく。<br />
最初は「いいですか口調」だったのも途中からため口となり終始彼のペースに飲まれていた。<br />
よくよく見ると私より年下のようだ。すっきりと髪の毛は刈り込まれており、一見するととてもさわやかな好青年といったイデタチ。<br />
高速道路を長時間運転し目に入ったSAで休憩をしていると、出し抜けに声を掛けられたのだった。<br />
結局彼は京都に向かう途中ということだったので、ちょっと遠回りになるけれどいいだろうと、私は彼を京都に送っていくことになった。<br />
助手席で難しそうな顔をしながら腕を組みじっと考え事にふけっているようだったが突然ふっとこちらがわを見ると「やっぱその腕時計もらうことにする」と晴れ晴れとした顔で運転している私の左腕から義父に結婚のときにもらった高級時計をもぎ取った。<br />
「『禁煙』てあるようだけど、タバコすうね」と念を押してから彼は先ほど私からもらったライターでタバコに火をつけた。<br />
「やっぱ車ん中風ないから火がつけやすいよね」と当たり前のことを言って、その自分が言ったせりふがひどく彼の中で気に入ったらしくずけずけとまた同じことを繰り返し述べてはおかしさに耐えないようにして笑った。<br />
「あのインターで降りるのが確かに市内へのアクセスはいいんだけど、一個手前で降りて景色眺めながらゆっくりと行こうよ」と提案された。<br />
言うとおりにそのインターで降り、料金所で清算をしている隣で彼は頭の後ろで手を組んで口笛を吹こうとしているのかひゅううーひゅゅうゆーと音にならない口笛を鳴らすのに腐心していた。<br />
目が合うとなんともばつの悪そうにして「まさか、口笛を吹けるようにレクチャーしてなんていえないもんな」と、なんとも偉そうに言うので、そうだよなあと思った。<br />
「あっ！」<br />
途端に大きな声をあげるので何かと問うと、今日は人気ゲームソフトでずっと心待ちにしていた某の発売日なので、まあそう遠くない距離ということもありこのまま大阪市内に行こうということになった。<br />
「こばらへったからうどんを食べよう。う～ん。京都でうどんってのもなあ。おまえはどうしたい？」<br />
慣れてくると私のことを途中からお前と呼ぶようになっていた。<br />
なんと答えていいものか黙っていると「お前、ちゃんと自分の意見もたなきゃだめだよ。指示待ちはだめ。提案ベースで行かないと」と諭された。<br />
諭されたからというわけでもないのだが「カレーとかそんなんでいいかな」と答える。<br />
「八橋ってたとえば煮込んだらうまそうじゃない？」とたぶん彼なりに頭の中で考えていた空想を表明された。<br />
結局トンカツたべたいということになって、けれどせっかくトンカツを食べるのだから絶対失敗したくないということになり、かなり吟味をするためにまずは評判を聞いてきてくれと嫌がる私にどうしても頼む、というから結局駅前で恥ずかしいなあと思いながら「おいしいって評判のトンカツやさん教えてください」と聞き込みをするのだった。<br />
「けど、評判って意外とあてにならないよ」ということで、目に付いたテキトーなトンカツ屋で彼は「スープスパください」といって店員を困らせていた。<br />
食後コーヒーをすすりながら「ねえねえ、お前ジャージっていう？それともジャッシーっていう？いや、俺の小学校ではジャッシーって言ってたんだよ」などと軽口を叩いている。<br />
「この後すこし散歩したいからさっきのコンビニのところへ30分後待ち合わせね」と会計は当然自分もちじゃないという態度で店を出て行った。</p>

<p>窓から京都近郊の山々が眺められる。<br />
ちょうど季節は夏の終わりで木々は紅葉の支度をそろそろはじめるかといったところなのだろう。明らかに夏の盛りの色とは違って見える。<br />
30分後っていったっけなと腕時計に目を落とすも、そういえばさっきとられたっけなと自嘲する。<br />
所定のコンビニに5分早めに到着し駐車場に車を停めて待っていたがそれからさらに20分後に大幅に遅刻して戻ってきた。<br />
車の外からコンビニを指差してこちらを見ている。<br />
きっとなにか買ってくれというのだろう。<br />
彼のことだ、本当にどうでもいいようなものを買おうとしているのだろう。パワーウィンドウを空けて「なに？」と尋ねると、「いや、このコンビニトイレ貸してくれるかな？」と意見を求めていたのだった。<br />
トイレを借りに自動ドアを入っていく彼の背中を眺めながら、さて、大阪市内までの道順だけは確認しておこうと思うのだった。</p>]]>

</content>
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<title>大きな左手</title>
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<modified>2007-08-16T17:35:58Z</modified>
<issued>2007-08-16T16:43:10Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2007://1.469</id>
<created>2007-08-16T16:43:10Z</created>
<summary type="text/plain">手が大きくなった。
何かにぶつけて腫れ上がった程度のものではなく、それはビルくら...</summary>
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<name>hospital</name>


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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>手が大きくなった。<br />
何かにぶつけて腫れ上がった程度のものではなく、それはビルくらいはありそうなサイズだ。</p>

<p>その事に気が付いたのは目が覚めた時だ。<br />
目の前に横たわる巨大な手。<br />
自分が小さくなったのか、あるいは手が巨大化したのかは、遠近感覚が麻痺してしまった以上確認する事ができない。<br />
ただ、ぼんやりとだらしなくそして握り締められた、巨大な左手だった。</p>

<p>僕はまず左手の小指に足を引っ掛けて、えい、や、と登ることに成功した。<br />
なにぶん両手を存分に使えない不自由な状態だから非常に苦しい作業である事はいうまでもない。<br />
右手の指先を左手の小指の指紋のひだにすべりこませて右足をどこかひっかかりにうまくのせようとするも、爪は滑らかでどうにもうまくゆかない。<br />
昨晩習慣となっているハンドクリームを塗ってあるからなおさらなのだけど、それでもどうにかこうにか小指によじのぼり、薬指と小指の隙間を身をかがめて滑り落ちないように注意を払いながら登っていく。<br />
眼下を眺めれば高所がだめな僕には目がくらむような景色。<br />
床なのか大地なのか、とにかく僕には先ほど来遠近感覚がよくつかめておらず、落ちてもひょっとしたらなんでもない高さなのかもしれないが、目はくらむし、落ちる勇気も無ければ落ちる意味もないような気がした。<br />
腰が痛む。<br />
無理な姿勢のまま歩き続けて間接を二つ通り過ぎると中指の付け根に通じる坂道があり、それはあまりにも急峻で立ちくらみを覚えた。<br />
外側の崖を上っていくのはあまりにも危険に感じられたので僕は坂道の手前左側に穿たれた洞窟、つまり掌側へと向かった。<br />
じっとりとしめっていて十分に光の届かない広大な薄闇の空間。<br />
手相の事を勉強したわけではないので詳しくはわからないけれど、生命線だの知能線、どれかに沿って歩いていけば上のほうへいけるのかもしれない。<br />
上を目指す理由もわからないのだけれど。</p>

<p>ふと感じる。<br />
僕が左手に力をいれて精一杯握り締めたら僕自体どうなってしまうのだろうか。<br />
むんずと握りつぶされてしまって、全身の骨がばきぼきと砕かれてしまうのだろうか。<br />
十分に考えられることだから、誤って左手に力を入れないように気持ちを集中させながら、僕は掘り込まれている掌の線に沿ってとにかく上と思われる方向へ、あせればあせるほど汗腺からふきだされる汗に足をとられないように注意しながら探検をしている。<br />
何本の線から線へと移動してどれだけ歩いたろう。<br />
足が汗に滑ってもう駄目かと思った瞬間体が掌のくぼみにすっぽりとおさまってなんとか助かったりしながらも、僕の探検は続いた。</p>

<p>どのくらい経ったろう、遠くに光が差している場所が見える。<br />
薄闇に目が慣れていた僕には強すぎる光に包まれ、新鮮な空気が頬を撫でる。<br />
長い間左掌の湿った洞窟を探検していたのだからふと全身の緊張が解ける。<br />
足元を眺めると中指の上に自分が立っていることがわかる。<br />
子供の時分、美術の時間に誤って彫刻刀で傷つけてしまった傷がある。<br />
痛みを思い出した反射からか、ぐっと掌に力をこめてしまって先ほど這い出してきた穴がぐっとすぼまる。<br />
掌から押し出された空気圧が僕の背中を押し、すんでのところで傷に足をひっかけて落ちるのを防ぐ。<br />
ひやりとした。<br />
間一髪昔の傷のおかげで僕は命拾いをした。</p>

<p>さあ、上を目指そう。<br />
なにかとっかかりを、と探していた目に付いたのは人差し指に群生する産毛。<br />
産毛をロープ代わりにして何本か伝っていけば、やがて親指の先に到達できるかもしれない。<br />
以前友人に誘われて岩場の海水浴に行ったときを思い出す。<br />
ごつごつした岸壁を誰が設置したのかわからないロープを伝って降りていったものだ。</p>

<p>今僕には右手しかない。<br />
果たして右手だけで産毛をたよりによじ登っていくような芸当ができようものか。<br />
先ほどきた道を引き返すにしても、またなにかの拍子で左手に力を入れてしまったらと思うとためらわれる。</p>

<p>一本だらしなくたれさがる産毛をつかんで切れてしまわないか思い切り引っ張ってみた。<br />
痛っ。<br />
・・・・・・。</p>

<p>目が覚めたと思ったのに、また目が覚めていた。<br />
寝ぼけながらも左手の人差し指にのこるかすかな痛みを感じる。<br />
遠近感を失った僕にはいったい何事が起こっているのかまったくつかめていない。<br />
右手にはもう産毛とはよぶことのできない太くて長い毛が握り締められている。</p>]]>

</content>
</entry>
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<title>新築訪問</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://hospitale.org/archives/2006/03/post_256.html" />
<modified>2006-03-22T14:40:41Z</modified>
<issued>2006-03-22T14:08:22Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2006://1.443</id>
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<summary type="text/plain">小学生以来の親友が家を建てたから遊びに来いと日曜日に僕を招待した。
お祝いをもっ...</summary>
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<name>hospital</name>


</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>小学生以来の親友が家を建てたから遊びに来いと日曜日に僕を招待した。<br />
お祝いをもって、彼の新居を訪れた。</p>

<p>駅からしばらく歩いていくと、家の前でSが笑顔で手を振っている。<br />
その背後には彼の新居、庭付き一戸建てが聳え立っていた。</p>

<p>「おめでとう」<br />
「ありがとう。俺もやっと一国一城の主だよ」</p>

<p>さて、と挨拶が終わったところで、まじまじと新築を眺めたのだが、どうにも変に見える。<br />
どうにもおかしい。</p>

<p>「あのさ、この家、浮いてない？」<br />
「気づいたか？１F部分が無いんだ」</p>

<p>よくみると、１Fがなく、いきなり２Fだ。<br />
２Fを支える壁も無ければ柱も梁も、基礎さえもない。</p>

<p>「気づいたか？って、なんで浮いてるのよ」<br />
「いや、新しく開発された工法らしくてさ。風通しを良くして、目的に純粋に設計していくと最終的にはこうゆう形になるんだってさ」<br />
「だってさって、ならないよ普通。よく考えてもみろよ。不思議だろ？」<br />
「俺も最初はとまどったよ。だって１Fが無いんだもんな。１Fがあってこその、２Fだろ？けど、そこが日本人の悪いところでさ。最初から２Fでもいいじゃないっていう」</p>

<p>そうゆう問題ではないと思う。<br />
しかし、Sがそう言い切るのだから、それ以上なにも言えない。</p>

<p>「まあ、入れよ」<br />
「ちょっとまてよ。お前、なんで羽が生えてるんだよ」<br />
「え？だって、いきなり２Fだと、羽だって生えるよ」<br />
「はえないよ普通。お前みたいに異常体質じゃないと、この家に入れないのかよ」<br />
「やれやれ・・羽くらいはえろよ」</p>

<p>ぶぁさ、ぶぁさ、ぶぁさ。<br />
ひゅー、すぽん。</p>

<p>目の前で親友が突如飛び立ち、家の中へと入っていった。</p>

<p>「はっはっは、しょうがないなあお前も。今からロープたらすから、それではいれよな」</p>

<p>しかたなく言うとおりに少々ぶざまだが、ロープにしがみついて家の中に入った。<br />
中に入ると、ものすごく広いフロアだった。</p>

<p>「なんでこんなに広いんだよ。見た目より全然でかいよ。おかしいよこれ」<br />
「遊び心満載だろ」<br />
「いや、そうゆう問題じゃなくて、法則完全無視かよ」</p>

<p>遠くがかすんでいる。<br />
しかも畳敷きである。</p>

<p>「ごめん。頭がおかしくなりそう」<br />
「まあ、そこ座れよ。今コーヒー淹れるから」<br />
「ああ・・」<br />
「あ、わりい、コーヒー切れてるや。唾飲んでてもらっていい？」<br />
「それなら、言われなくても飲むよ」<br />
「あのさ、座ってられると落ち着かないから立っててもらえる？」</p>

<p>なんとなく納得がいかないが、そろそろと立った。</p>

<p>「これ、新築祝い」<br />
「いやー、悪いなあ。ほんと申し訳ない。2万か。少ないなあ」<br />
「・・・わるかったな」<br />
「わるいなあ。ひっこしたばっかで、なんにもそろってないんだよ。テレビでもつける真似しようか？」<br />
「ああ、やってくれよ」<br />
「ええっとぉ、リモコンどこだっけなあ」</p>

<p>真似が始まった。<br />
演技に熱が篭っている。</p>

<p>「あ、ばかぁ、お前それ座布団じゃないって、リモコンだよぉ。似てるけどさあ。わはは、馬鹿馬鹿」<br />
「・・・」<br />
「さて・・と、えい、えい。あれぇ？つかないぞぉ。あっ、ついたあ。最近の機械は分からないなあ」</p>

<p>「ぷぷぷ、またみのさんでてるよ」<br />
「・・・あの、そろそろ帰るな」<br />
「ええ？もう帰るのか？お、もうこんな時間か」<br />
「３０分しかたってないけどな。それに、まだ昼だけどな」<br />
「じゃあ、２Fだし、気をつけて落ちてな」<br />
「ああ・・」<br />
「押そうか？」<br />
「いや、いい」</p>

<p>窓から気合を入れてえいと飛び降りた。<br />
いやがらせかと思うくらい庭はコンクリートで固めてあった。</p>

<p>「大丈夫かぁ～」</p>

<p>２Fからこだまする声が蹲った僕のところまで届いた。<br />
捻挫くらいはしていそうな激痛である。<br />
脂汗をかきながら、庭付き一戸建ては良く考えて建てようと思った。</p>]]>

</content>
</entry>
<entry>
<title>血口まで行こう</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://hospitale.org/archives/2006/03/post_255.html" />
<modified>2006-03-18T05:26:26Z</modified>
<issued>2006-03-18T05:17:09Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2006://1.442</id>
<created>2006-03-18T05:17:09Z</created>
<summary type="text/plain">あいつ、もう血鼻になってる
止めてやろう

止めたらあいつが可哀想だ

でも、あ...</summary>
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<name>hospital</name>


</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>あいつ、もう血鼻になってる<br />
止めてやろう</p>

<p>止めたらあいつが可哀想だ</p>

<p>でも、あいつもうあんなに血鼻になって</p>

<p>止めるな<br />
それがあいつの望んでることだ</p>

<p><br />
あいつは血鼻になって彼女の前に立ち尽くしていた。<br />
彼女の方も困っている。<br />
「血鼻になってるよ」<br />
彼女は気を使うような顔をしてあいつに言った。<br />
『気を使うような』この態度が更にあいつの血鼻を加速させた。</p>

<p>鼻のすべての毛穴からいっせいに血が噴出す。<br />
彼女は、あいつが気づかないようにわずかに退き、血が自分にかからないようにした。<br />
そして、『気づかないように』という、この気の使い方が更にあいつの血鼻を加速させた。</p>

<p>毛穴から流れ落ちるようだった血は更に勢いを増し、水鉄砲のように線形を描いて噴出した。<br />
避ける術も無く、彼女の美しい顔は真っ赤に染まった。<br />
「私の顔に・」<br />
彼女はそう口に出すと同時に、『しまった』という表情をした。<br />
そして、恐る恐るあいつの顔色を伺った。<br />
この『恐る恐る顔色を伺う』という彼女の行動が、あいつの中にわずかに残っていた希望を完全に断ち切ることとなった。</p>

<p><br />
血目だ</p>

<p>ああ</p>

<p>止めるか</p>

<p>いや、もう遅い<br />
もう止めても無意味だ</p>

<p>どうする</p>

<p>見よう</p>

<p>見るって</p>

<p>見届けよう</p>

<p>・・・</p>

<p><br />
あいつの目は真っ赤に染まり、涙のように血が流れ出した。<br />
「血目までいかないでよ」<br />
彼女は涙目になってそう訴えた。<br />
「血目までいってどうしたいの？ねえ、どうしたいの？」<br />
彼女は泣きながらそう訴えた。</p>

<p>あいつは鼻血を出した。</p>

<p>「僕だってなんだ」</p>

<p>あいつは疑問とも主張とも取れない言葉を吐いた。<br />
それと同時に口に流れ込んでいた鼻血が飛び散り、再び彼女の顔にかかった。</p>

<p><br />
あれ、血口じゃないのか</p>

<p>いや、あれは鼻血が口に入っただけだ</p>

<p>そうか、そうならいいが</p>

<p><br />
彼女は再び顔に付いた血を手のひらでぬぐうと、突然、顔を上げて叫んだ。</p>

<p>「何なのよあんた！」</p>

<p>あいつは動かなかった。<br />
下を向いたままピクリとも動かなかった。</p>

<p>「何か言いなさいよ」</p>

<p><br />
（ばっきゃろう）</p>

<p><br />
それは声というより、むしろ血だった。<br />
口から霧状に噴出した血が耳から私たちの脳内に入り、その言葉を知覚させる、そんな感覚だった。</p>

<p><br />
血口だ</p>

<p>初めて見た</p>

<p>オレもだ</p>

<p>どうする</p>

<p>どうするも何もない</p>

<p>良かったな、あいつ</p>

<p>まあな</p>

<p>あいつまた戻りたかったんだろ</p>

<p>そうみたいだな</p>

<p></p>

<p>あいつの顔は突然霧のようになって私たちの目の前から消えた。<br />
そこには影のような黒い跡だけが残った。</p>

<p>死んでからというもの、私たちは生きている間の嫌なこと楽しかったことを超えた不思議な感覚で生活していた。<br />
死んでいる以上、生活しているという表現もおかしいが、それは生きている感覚とさほど変わらなかった。<br />
もちろん、足も体もなく、あるのは顔だけではあるが、その顔も自分の想像通りに操れるものだった。<br />
つまり、この世界のすべての元人間たちは美男美女となっていた。</p>

<p>この世界はとても居心地の良いものだった。<br />
現世に未練のある者は少なかった。</p>

<p>血口までいくと現世に戻ってしまう</p>

<p>そういう噂が流れていた。<br />
はっきりと信じていたわけではないが、私たちは自然と感情的にならないように気をつけていた。</p>

<p>そして、あいつは今、私たちの目の前から消えた。<br />
あいつは現世に戻ったのだ。</p>

<p>私たちは戸惑い、あいつが消えてしまった跡をしばらく眺めていたが<br />
その跡が消えるのを見届けると<br />
また無数の顔の流れの中に戻り、のんびりと漂うことにした。</p>]]>

</content>
</entry>
<entry>
<title>一年ぶりの電話</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://hospitale.org/archives/2006/03/post_254.html" />
<modified>2006-03-12T03:05:23Z</modified>
<issued>2006-03-12T02:40:59Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2006://1.441</id>
<created>2006-03-12T02:40:59Z</created>
<summary type="text/plain">しばらく会ってなかったから電話したの？

電話口からは冷たい声が返ってきた。
そ...</summary>
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<name>hospital</name>


</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>しばらく会ってなかったから電話したの？</p>

<p>電話口からは冷たい声が返ってきた。<br />
その女性は１年前まで一ヶ月に一度ほど会っていた人だ。<br />
会っていたと言っても特別なことはなく、<br />
ただ買い物をしたり、映画を見に行ったり、美術館へ行ったり<br />
それだけのことだ。<br />
お互いそれ以上のことは望んでいなかったように思う。</p>

<p>１年間、連絡も取らずにいたのは、その微妙な距離感のせいだった。<br />
こちらからもう少し何らかのアプローチをすれば良かったのかもしれない。<br />
でも、結局そうすることはなかった。<br />
彼女はそのことを責めているのだろう。<br />
返す言葉が見当たらなかった。</p>

<p>久しぶりにどこかで会おう</p>

<p>そう言おうとしたところで、彼女が言った。</p>

<p>今、忙しいの。切るね</p>

<p>そこで電話は終わった。<br />
特に美人でもないあの女に、冷たくあしらわれてしまった。</p>

<p>特に美人ではない</p>

<p>私の心の中でその言葉がこだました。<br />
電話を手に取り、もう一度彼女に電話した。</p>

<p>彼女が出ると、私はすぐに話し始めた。</p>

<p>今日、電話をかけたのは久しぶりに話そうと思ったとか、映画を見に行こうとかそういうことじゃないんだ<br />
一つ伝えたかっただけなんだ</p>

<p>私は思い切って先ほどの言葉を口にした。</p>

<p>特に美人ではないじゃないですか</p>

<p>なぜかセールスマンのような口調になった。<br />
彼女は何も答えなかったが<br />
電話の向こうから、何か声にはならない声が聞こえてくる気がした。<br />
私は続けた。</p>

<p>スタイルも良くないですし</p>

<p>相変わらず敬語だった。</p>

<p>性格は悪くないんですが<br />
見た目は良くないけど、性格は悪くないって、どうなんでしょう</p>

<p>自分で何を言ってるのかわからなかった。</p>

<p>あなた、寂しい人なのね</p>

<p>彼女は一言そう言った。<br />
辛そうな声だった。</p>

<p>私、今、本当に忙しいの。切るね</p>

<p>そこで電話は切れた。</p>

<p><br />
終わった。</p>

<p>惨敗だ。惨めな敗北。<br />
なんなんだオレは。<br />
一体なんだったんだ。今の自分の行動は。</p>

<p>私は気持ちを静めようと風呂に入った。<br />
蛇口が電話に見えた。<br />
意味もなく蛇口に噛み付いた。<br />
硬く冷たかった。</p>

<p>風呂から出るともう一度電話を手に取り、彼女に電話をかけた。<br />
もう出てくれないと思ったが彼女は電話に出た。<br />
彼女は先ほどよりも穏やかな声で言った。</p>

<p>今用事が済んだから</p>

<p>どこへ行ってたの？</p>

<p>銀行よ<br />
銀行というか消費者金融</p>

<p>どうして</p>

<p>どうしてってお金がなくなったから</p>

<p>どうしてそんな所でお金を借りたの</p>

<p>私の勝手でしょ<br />
駅から家まで歩くからその間、あなたの話を聞くわ</p>

<p>・・・</p>

<p>どうして何度も電話をかけてくるの？<br />
冷たくあしらわれて悔しかった？</p>

<p>そうだ</p>

<p>今度は何を言いたいの</p>

<p>さっきはすまなかった</p>

<p>別にいいのよ</p>

<p>自分でもどうして今になって電話をしたのかわからないんだ<br />
きっと安心したかったんだと思う</p>

<p>私なら何も変わってないわよ、一年前と。<br />
ちょっと太ったけどね</p>

<p>何も言葉を返せなかった。<br />
彼女は私の考えていることを何でも知っているようだった。</p>

<p>もうすぐ家に着くから</p>

<p>彼女はそう言った。</p>

<p>わかった</p>

<p>そう言って電話を切ろうとした時、聞きなれた音が聞こえた。</p>

<p>「おいしい。おいしい。丸ちゃん弁当。あなたも一つ、幸せ弁当」</p>

<p>家の近くの弁当屋のアナウンスだ。<br />
寂れた街並みによく似合う、ひとかけらのセンスもないアナウンス。<br />
でも、どうして彼女の電話から。</p>

<p>今、どこにいるの？</p>

<p>踏み切りの近く</p>

<p>踏みきり？踏切って俺の家の近くの？</p>

<p>そう</p>

<p>近くに住んでるの？</p>

<p>そうよ</p>

<p>いつから</p>

<p>一年ちょっと前かしら</p>

<p>どうして言ってくれなかったの？</p>

<p>聞かれなかったから</p>

<p>でも、どうして・</p>

<p>聞きたいことはたくさんあるような気がしたが何から聞いて良いのかわからなかった。</p>

<p>近くってどの辺り？</p>

<p>だから、あの踏みきりの近くよ<br />
あの踏切を渡って左に曲がって５０メートルくらいの小さなアパート</p>

<p>小さな踏みきりを渡って左に５０メートル・・<br />
それってウチの目の前じゃないの？</p>

<p>そうよ</p>

<p><br />
気が動転した。<br />
どうして今まで気づかなかったんだろう。</p>

<p>私見つからないようにしてたから</p>

<p>見つからないようにって言ったって一年も目の前のアパートに住んでたらどうしたってわかるだろう</p>

<p>私、外へ出なかったの</p>

<p>出なかったってどういう意味？</p>

<p>そのままの意味よ。まったく出なかったの</p>

<p>一度も？</p>

<p>一ヶ月に一度くらいは出たわ。お金がなくなった時に</p>

<p>食べ物は？</p>

<p>出前</p>

<p>一日中家にいたの？</p>

<p>そう</p>

<p>何を、、何をしてたの？</p>

<p>あなたの家の音聞いてた</p>

<p>家の音？</p>

<p>うん、盗聴器<br />
今日は久しぶりに外へ出たの。疲れちゃった<br />
そろそろ切るわ。もう家の前だから</p>

<p>私が何かを言う前に電話は切れた。<br />
私は電話をテーブルに置くと、取り憑かれたように窓へ近寄り、カーテンをあけた。</p>

<p>線路を挟んだ目の前のアパートの前には<br />
ピンク色のセーターにピンク色のスカートを合わせた女性が立っていた。<br />
歩くのもやっとなほど病的な太り方をしたその女性が、ニコニコと笑いながら<br />
なにやら私の方に向かって手を振っていた。</p>]]>

</content>
</entry>
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<title>烏賊（いか）</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://hospitale.org/archives/2006/03/post_253.html" />
<modified>2006-03-11T15:42:07Z</modified>
<issued>2006-03-11T15:41:49Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2006://1.440</id>
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<summary type="text/plain">流行とは不思議だ。
なにが流行るかなんてわからない、とは常々思っていたけれど、い...</summary>
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<name>hospital</name>


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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>流行とは不思議だ。<br />
なにが流行るかなんてわからない、とは常々思っていたけれど、いよいよ自分がおかしいのかと疑ってしまう流行が訪れた。</p>

<p>烏賊ブームである。</p>

<p>その薬品を振り掛けると、いろんな物がたちどころに烏賊になる。<br />
チョコレートだろうが、畑の野菜だろうが、はたまた牧場に放たれている牛だろうと、そのサイズにあわせて烏賊にしてしまう薬がにわかに流行りだした。</p>

<p>もともとイカが好きではなかった私はうろたえた。<br />
居酒屋なんかで刺身を注文すると、必ずあの白い滑らかな物体が皿の脇に登場するが、箸をつけることはなかった。<br />
しかし、あれだけ刺身の代表選手としての名声をほしいままにしているのだから、私以外の大勢は烏賊が嫌いであるはずがない。<br />
その烏賊の薬が、TVコマーシャルや雑誌・新聞などで大々的に取り上げられるようになると、異常なほどに烏賊ブームは加熱した。<br />
私以外の人間は相当烏賊のことが好きだったことを知った。</p>

<p>先日友人同士で久しぶりに銀座で集まった時のこと。<br />
生ビール数杯といくつかの料理を注文し乾杯をした後、友人の木内が得意満面に烏賊薬をバッグから取り出した。<br />
おおーー、歓声が上がる。<br />
安くはない烏賊薬を木内が取り出したことに対する絶賛であった。<br />
私がひそかに思いを寄せて注文したカニクリームコロッケが、その最初の犠牲者だった。<br />
ふんわりと、それでいて外側がかりっと、中はジューシー、あの食感が楽しみで注文したというのに、残酷にも木内はそれに烏賊薬を振りかけた。<br />
たちまちそれは烏賊に変わり果てた。</p>

<p>「烏賊だーーっ」</p>

<p>歓声があがり、みな夢中でそれに箸を差し出す。</p>

<p>「うめぇー、こりこりしてて、うめー」</p>

<p>これはほんの序幕であり、店員がもってくるシーザーサラダ、もずく、きのこスパゲティーが次々と烏賊に変えられてしまう。</p>

<p>「やっぱ烏賊だよなー」<br />
「吸盤がたまらねー」<br />
「うめぇー」</p>

<p>だったら最初から烏賊を注文しろよと思いながらも、私は好きではない烏賊をしかたなく食べては生ビールで飲み下すのであった。<br />
これほどまでに潜在的な烏賊愛好者が多いとは、自分の価値観に軌道修正を余儀なくされた同窓会となった。</p>

<p>ブームによる悲劇はこれだけではない。<br />
先日の合コン（勿論料理は烏賊だらけ）ですこし親しくなった芽衣さんとドライブに行ったときの事。<br />
かなりタイプの女性だったので張り切ってコースを考えて臨んだデートだった。<br />
アウトレットへ連れて行き、いくつか買い物を楽しんだあと、彼女が「コバラへったよね？」とそこにあったクレープショップで女性らしくうきうきとイチゴバナナクレープやら生クリームが入ったフルーツクレープ、チョコレートクレープだことの、5分ほどさんざん考えあぐねた結果、一つに決めた。<br />
可愛いなあと思いながら見ていたら、<br />
「二人でたべよう♪」と申し出られたので少々赤面し、どきどきクレープが出来上がるのを待っていた。</p>

<p>その時彼女がやにわに取り出したのが烏賊薬だった。</p>

<p>「あ・・・、結局烏賊？」</p>

<p>ついつい思っていたことが口をついて出てしまった。</p>

<p>「だって、烏賊おいしいよ？」</p>

<p>すっとんきょうな表情で、不思議そうに私の顔を見つめていた。<br />
あれだけ考えてイチゴバナナクレープにした、あれは一体なんだったのだろうか。<br />
つくりたてのおいしそうなイチゴバナナクレープは残酷にも烏賊薬をふりかけられ、たちまち単なる烏賊に変わり果ててしまった。<br />
足が何本か紙袋からはみ出ていて、それを一本ひっこぬくと口に入れて「おーいしー」と幸せそうにこちらをみる。<br />
「たべる？」</p>

<p><br />
その後の行程は水族館ということで、絶望したまま車を走らせたのだったが、道中の畑に生える植物すべてが私の目には烏賊に見えてしかたなかった。<br />
いや、烏賊だった。<br />
前にTVで見た気がする。<br />
「畑で烏賊！」<br />
なんというキャッチだろうと思いながらしかし私は烏賊に興味がないため聞き流したが、それほどまでに世の中の人たちは烏賊が好きだったとは。<br />
辟易しながら水族館に入館した。</p>

<p>予想していたことだったが、水槽を優雅に泳ぐ、大小の烏賊、イカ、いか。<br />
「わー。すごぉーい。元まんぼーだってぇ～。めずらしぃー」<br />
「ええー。すごい、元さめ！こわい！」<br />
「元いそぎんちゃく、かわいいいい」</p>

<p>「きゃー。元ヒカルゲンジだって」<br />
「んなわけあるかい！！」</p>

<p>そんな小ネタをはさみつつ、お次はお楽しみ、元イルカショーへと向かうのだった。<br />
もちろん、でかい烏賊がぺったりとプールサイドに横たわっているわけだ。<br />
飼育係のお兄さんがでてきて、さあ、はじまりますと観衆に向かって声をはりあげる。<br />
すると、のっそりと一本の足が天空をさし、その姿をみて観衆が、わーとどよめきたつ。<br />
となりで芽衣さんもきゃっきゃと喜んでいる。<br />
サイズのでかい烏賊がただちょっと足をあげたそのことに対して、私はなんの感慨もないのだが、こうして周りの一般大衆はその一挙手一投足（烏賊だけにどちらが足で手かわからんのだが）に喜び驚くのであった。</p>

<p>人生とは自分という人間が一体なんであるかを知るための旅であると、私はこれまで規定してきた。<br />
そして、その姿勢は今後も変わらないだろうけれど、こうして自分の嗜好性を真っ向から否定されると、けっこう落ち込むものである。<br />
烏賊のどこがおいしいと感じるのか、私には未だに理解ができない。<br />
寿司を頼んだ時にも、どうか烏賊が入っていませんように、と願うくらいだから。</p>

<p>こうして自分と違う多くのものを認めて、そしてその時々に自分という人間の置かれている位置感覚を養って行くことが大切なのだろう。<br />
今度はどんな流行が訪れるのだろうか。<br />
そのことを考えると怖くもありまた少し楽しみでもある。</p>

<p>ゲッソ りしながら物語をこんな風に締めくくるのだが、イカがなものか。</p>]]>

</content>
</entry>
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<title>大切な手紙</title>
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<modified>2006-01-14T13:13:24Z</modified>
<issued>2006-01-14T13:10:17Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2006://1.436</id>
<created>2006-01-14T13:10:17Z</created>
<summary type="text/plain">夜中に起き出して大切な人に手紙を書いた。
ずっと頭の片隅に残っていたことが、ぷっ...</summary>
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<name>hospital</name>


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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>夜中に起き出して大切な人に手紙を書いた。<br />
ずっと頭の片隅に残っていたことが、ぷっつりと途切れた感じに、その行為は僕を生き返らせたように思う。</p>

<p>車を走らせて、一刻も早く相手に届くように、真夜中のポストを目指した。<br />
行く途中の下り坂のそこかしこには、壁がモルタルで塗られた古ぼけた建物がたくさんあって、その玄関から魔女のように化粧を塗りたくった元娼婦の女どもが、厚着した姿で往来を瞠っている。<br />
薄ぼけた街灯の下で、夜闇に隠されたそれら建物や女たちの汚れが、変にメルヘンな印象を放っていて面白かった。</p>

<p>坂を下りきったところにある郵便局は、始めてみる真夜中の寂しさをまとっていて、人々の中継点として機能する昼間とは違って、くたびれて寝息をたてて休んでいるように見えた。<br />
ポストを前にして立ち止まり、投函すべきその便箋にもう一度目をやった。<br />
後で後悔するような内容ではないだろうか。<br />
ごくり考え自問する。<br />
寒さもあり、面倒になって、投函した。</p>

<p>闇に残っている少しばかりの光が、投函口の金属の上でほのかに息づいている。<br />
丁寧に手紙を奥へ差し伸べた時、途中で引っかかっている他人の手紙が指に触れた。<br />
大量の手紙がつまっているのか、僕の手紙は奥のほうへなかなか気持ちよく入っていかない。<br />
いらいらして手を引き抜くと、別の手紙も一緒に、ずるり引き抜かれた。<br />
入り口のところでひっかかっていた他人の手紙である。</p>

<p>僕の知らない他人が、これも見知らぬ他人にあてて書いた手紙。<br />
それをもって車の中に引き返し、ルームランプの光の元で封を切った。<br />
興味を惹かれて僕はその文を目で追った。</p>

<p><br />
<em>DEAR　勝又徹（カ・トゥーンちゃん）様</p>

<p>拝啓　腹が減っては戦ができないのかな？という５年前のあの言葉。<br />
私なりに、今更ながら頭に来ています。<br />
ぶち殺したいです。</p>

<p>おい。勝又どん。わす、子供できたですたい。<br />
わっすぇ。わっすぇ。って呼吸ばってんしながら、子供こさえたどころ、なぜだか、わすの腹のなかに、長野県ほどの大きさの赤ちゃんができました。<br />
「長野県ほどの」の部分は一部脚色が入っていますが、どうしても勝又どんに聞かせたかった。<br />
否。聞かせたかった。</p>

<p>昔からのあなたの口癖「宇宙的ものさし」で、考えてほしいんですけど、最近の小泉チルドレンについてどう思いますか。<br />
「最近の」って書いたけど、小泉チルドレン自体が最近のものだし、そういった意味での自分の中の矛盾点に、今赤面しています。<br />
えっとぉ、勝又さんだから言うんだけどぉ、琴欧州がせんべえだったらって考えるとぉ、発狂しそう。<br />
オリンピックっぽくない？<br />
（「オリンピックっぽくない？」って書きましたが、そうゆうとっさの一言的な勢い余ったかんじの意味の無い言葉って、ありますよね？ね？ね？特に意味がないのです）</p>

<p>ガチョーンガチョーンガチョーン、え、違いますよ、ガチョウの鳴きまねなら、ぐ・・・ぐぅぐぁぐあぁぐあぁ、でしょ？</p>

<p>笑えんな。はっはっはっはっは。埼玉県だったら、あなたは、はっはっはっは。</p>

<p>好きな人ができたけど、ある種自分のものになった瞬間にある種の魅力がなくなってしまうのがこわいから、ある種自分の思いは伝えない。</p>

<p>あの風俗店に通っている理由は、例の風俗嬢の人間性に惹かれたから、とか、そうゆう欺瞞は僕は絶対やだし、なんかそうゆうのってリアルに訴えてこないですよなあ<br />
おれ、ある種そうゆう馴れ合い、好きじゃないから<br />
ある種が口癖で悪りいか？</p>

<p>僕、警察の人と飲むの初めてですよ。ええ、これからも宜しくお願いします。ええ、全然イメージとちがって警察官さんのイメージかわりました。ええ、あ、大丈夫です、このまま運転して帰りますから。すぐそこですし。ついたら電話します。心配してくださってありがとうございます。え？（PM６:３０）</p>

<p><br />
人間ですから、日々、色々なことを考えているものです。<br />
変わらず鉄太郎さんは、スフィンクスって食べれるの？？？と、まじびびりする純真さを兼ね備えていますか？<br />
鉄太郎さんとの思い出は、それこそ一抹の、ぬ、です。<br />
永遠に冬が続くのではないかと、ぬ、疑ってしまいたいくらいに、ぬ、厳しい冷え込みです。</p>

<p>つんつく追伸。</p>

<p>冒頭の「DEAR」ですが、「日本人の癖に」と怒らないでよね。<br />
行間を読んで頂ければ幸いです。<br />
鏡とお腹って、最近ツボです。</em></p>

<p><br />
初めて読んだ他人の手紙の内容だった。<br />
手紙に落としていた目をさっとあげて、ウィンドウ越しに郵便局をながめた。<br />
その前にぽつんと赤いポスト箱。<br />
たくさんの気持ちの仲介を、その赤い体が果たしているんだろう。<br />
想いは、いろいろな形をとって、伝わって行く。</p>

<p>なんとなく拍子抜けした気持ちになったが、自分の書いた手紙のほうをまた顔の前にとりだして、折り目をきちんとつけてから、決心して、大切なあの人に思いを伝えようと、車から再び降りてポストの中に手紙を差し込んだ。<br />
すとん、と音がして、僕の手紙は僕の手から離れていった。<br />
どうやらこの他人の手紙が邪魔をして、僕の手紙は入っていかなかったようだ。</p>

<p>今も左手にある、全く知らない他人の手紙。<br />
なんとなく薄気味悪いが、バッグの中に入れていつでも読めるようにしておこう。<br />
送り主にも受取人にも悪いけど、これは僕があずかっておくことにする。</p>]]>

</content>
</entry>
<entry>
<title>ある夏の日</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://hospitale.org/archives/2005/12/post_251.html" />
<modified>2005-12-08T12:26:20Z</modified>
<issued>2005-12-08T12:25:39Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2005://1.427</id>
<created>2005-12-08T12:25:39Z</created>
<summary type="text/plain">何の変哲もない真夏のある日。

一人で過ごしている。

玄関で呼ぶ声がするから気...</summary>
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<name>hospital</name>


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<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>何の変哲もない真夏のある日。</p>

<p>一人で過ごしている。</p>

<p>玄関で呼ぶ声がするから気だるさをひきずって出てみると小太りの男が立っていた。<br />
迷惑に感じられる、汗みたいな男だ。</p>

<p>「なんでしょう」</p>

<p>逆光だから、男の顔が黒い。<br />
表情がよめず、外では蝉がやかましく、それは神経質な男が、戸外で一人わめき散らしているように聞こえる。</p>

<p>耳につく。</p>

<p><br />
返事がない。</p>

<p>ただじっとそこに突っ立っているので、もう一度声を掛けようとして、顔が逆光で暗いのではない、全焼した木造家屋のように、すすけて黒い。<br />
ということに、気づく。</p>

<p>顔の部分がそっくり焦げた男が、つったっている。</p>

<p>「あの」</p>

<p>上半身裸で、蛍光色みたいな、下品な色を使って、彼の体には刺青が彫られている。<br />
暑い所為で、うっすら全身に汗を湛えているようで、その色が汗と一緒に流れ落ちてしまわんばかり。<br />
蝉がなくほどに、どろどろどろどろ落ちていって、男はさっぱりの体になってしまうようにみえる。<br />
全体、ちんけな印象だ。</p>

<p>男が、ぼそり口をひらく。</p>

<p><br />
「生と死って曖昧だよなあ」</p>

<p>蝉の声が、さきほどよりじわりじわりと、男の汗と同様に勢いを増している、耳からそれは侵入して、蝉の声の液体の中に脳が沈められてゆき、液体が徐々に徐々に内部に伝わるように。</p>

<p>唐突の切り出しに、目の焦点があわなくなるような、へんなめまいに陥る。</p>

<p>「人は死ぬよなあ」</p>

<p>ワインを飲んで、窓の無いバスルームの小さな湯船につかっていて、湯はぬるく、恍惚として、いろんなものに思いを馳せるけれども、それらが浮かんでは消え浮かんでは消え、といったような虚無的な気持ちに、その自覚がないまま、陥っているような不安感の中で、じっとしているような、そんな気持ちに、男の声は響く。</p>

<p>こちらも依然としてつったっていることを余儀なくされているようで。</p>

<p>「そう思うのは、悲しすぎることだ。考えてみたら、そんなに悲しいことがこの世の中にあってたまるかって、かんじがするよ。それは誰しも思うことだとおもうのな」</p>

<p>外の真夏の色彩が、目の中に、さも今までは灰色の世界でしたが、これより色がつきます、とでも新技術をひけらかすかのごとく、にせものちっくに、だしぬけに、飛び込んできたので、さらに目の前の男の生気の乏しさが、がっかりと比較の中で浮きだされて。</p>

<p>「死ぬって、本当はないんじゃないのか。だって、自分が死ぬなんて想像もつかないし、そも、死が存在すること自体、考えられないほどに悲しすぎる話だよ。だって、無に帰すんだぜ。話にならないよ」</p>

<p>ぼーっと立っている。</p>

<p>「最愛の人のこと、思い出しても見ろよ。死ぬことなんて、考えたくもないだろう」</p>

<p>「考える必要なんてないんだぜ」</p>

<p>なぜ。</p>

<p>「初めから、死なんてものは、ないからさ」</p>

<p>「目の前のおっさんが、生きている証明が、口を動かして言葉を語り、心臓が勝手に動いて」</p>

<p>断続的な蝉の声の点と点の中に、顰蹙をかうほどの、ぶっきらぼうで傍若無人な無を置いてしまうと、そこでひとたび失われたリズムが、やがてはもちなおしてきて、徐々に調子をとりもどし、前よりも大きく回復するのだけど、またも置いてしまうから、けれど、それを迷惑そうにも思っていない様子で、永遠に続きそうな虚無的なリズムが、とても悩ましく、またも置いてしまう。</p>

<p>「呼吸が無意識に繰り返されるということだったらだよ。それらが止められてしまったことが死ということだったらだよ。考えてみたら、よくわからねえ現象だと思うんだよなあ」</p>

<p>「なんて、かく言う俺もな、実は知ってるんだ」</p>

<p></p>

<p>「死なんて、世の中にはないってことをさ。最初は信じられないことかもしれないけれど、徐々に分かるぜ」</p>

<p>男の蛍光色な刺青の、緑の部分がやけに目に付く。<br />
それが汗と一緒に流れ落ちているように見える。<br />
残念なことに、錯覚であって、本当にそれは肌に掘り込まれているものだとわかる。</p>

<p>「安心しな。あちこちに死は横たわっているし、初めからそんなものは存在しないのさ」</p>

<p>こんな男と、日中に、玄関先で立ち向かっていること自体、自分がいけないことをしているのではないかと、ふと考えにいたる。</p>

<p>残念な男だ。</p>

<p>声が悲しげに響く。</p>

<p>それは、一人の夜を得体の知れない不安に脅えながら、自分の心の中から湧き上がる誰かの小さな叫び声を、大音量でかけながら、ひっそりと作業をしているようなときに、ふいにもれる声のように。</p>

<p>「な」</p>

<p>男は白いすててこをはいていて、そのへんのおっさんの散歩の道すがらのスタイルで。<br />
そんな男が我が家の玄関先で、なれなれしい様子でたっている。</p>

<p><br />
それが、やけに、なつかしい。</p>

<p>「そのうち、きっとわかるぜ」</p>

<p>かといって、許しているわけではなく、むしろ憎たらしい。</p>

<p><br />
地面がぐにゃりとうごいた感覚。<br />
最近よくある感覚だ。</p>

<p>男はまた、黙った。</p>

<p><br />
少々飽きて、大きなあくびを、一つかいた。</p>]]>

</content>
</entry>
<entry>
<title>君が溢れてる</title>
<link rel="alternate" type="text/html" href="http://hospitale.org/archives/2005/07/post_230.html" />
<modified>2005-07-30T03:24:12Z</modified>
<issued>2005-07-30T03:22:50Z</issued>
<id>tag:hospitale.org,2005://1.409</id>
<created>2005-07-30T03:22:50Z</created>
<summary type="text/plain">彼女の事は好きだけど、付き合って行く事は厄介を伴う。

癲癇みたいなものなのか。...</summary>
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<name>hospital</name>


</author>

<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://hospitale.org/">
<![CDATA[<p>彼女の事は好きだけど、付き合って行く事は厄介を伴う。</p>

<p>癲癇みたいなものなのか。<br />
なんの予告も無く彼女はとろけだす。<br />
汗をかくように、白い彼女は輪郭をぼやけさせ、その時僕はいつも困惑する。</p>

<p>部屋で二人でいる時にとろけだすなら安心で、すぐに彼女を抱きかかえてバスルームに駆け込む。<br />
「ごめんね。ほんとごめん」<br />
と謝る彼女。</p>

<p>僕と付き合う以前には、一体誰がこんな彼女を介抱したのか。<br />
放っておくときっと彼女は流れ出してしまって、いなくなってしまうだろう。</p>

<p>栓をはめて、バスタブに彼女を満たしてあげる。<br />
満たされた彼女はしばらくずっとそのままで、液体の彼女に手を浸すとほんのりと温かい。<br />
その温かさが、僕に対する感謝だったり愛だったりするのだろうかと、ぼけっとしながら液体を見つめ続ける。</p>

<p>彼女と付き合い始めたのは２年前くらいで、過去の話は互いにあまりしゃべらない。<br />
どうやら彼女は一人のようで、家族や近親者の影は見えない。</p>

<p>いつも街を一緒に歩く時には必ずポリ袋のようなものを僕が持っていて、いつ彼女がとろけだしてもいいようにしてあげる。<br />
こんな恋人をもったということで、僕の習慣は少し特殊なものになった。</p>

<p>緊張感はいつものことで、だってふとした瞬間に彼女は輪郭をぼやけさせているのだから。</p>

<p>会話してる時にふと彼女が黙るから、心配になってみやると、「大丈夫だよ」と微笑み返す。<br />
その時のからかったような表情はとても白くて可愛い。<br />
いつも僕が心配していることをからかいながらも感謝しているのを知る。</p>

<p>ベンチに座って休日の昼下がりの平和な景色を眺めていると、隣で知らぬ間にとろけている場合には、僕はすぐに小さく畳んであるポリ袋を取り出して、彼女をそこに流し込む。<br />
平和な景色が一転して、僕はおろおろと作業をするのだ。<br />
いたたまれない。<br />
とろけているのなら、なにか言ってくれればいいのに。<br />
そんな願いも空しく、彼女は黙ってポリ袋に満たされる。</p>

<p>普段ならすぐに元通りにもどるのに、たまになかなか戻らなくて心配になることがある。<br />
そんな時は大き目のバッグに彼女を入れて、たぽんたぽんと音をさせながら僕は電車に乗ったりする。<br />
背中で振動する彼女は重くて、その苦労が切ない。<br />
はやく戻ってくれないかと願う僕をせせら笑っているような振動が憎い。<br />
満員電車で椅子に座り、彼女を自分の前に置くと、とても迷惑そうにほかの乗客が僕のほうをみるのだけど、なんとか理解してもらいたいといつもながらに切なくなる。<br />
長くても３日くらいで元通りに戻ってくれて「おかえり」「ただいま。ごめんね」と久しぶりの再会を二人で喜ぶ。</p>

<p>彼女が液体の日の夜には、必ずポリ袋からバスタブに彼女をうつしかえて、彼女に手を浸しながら、僕は色々なことを考えたりする。<br />
その時間は今や僕にとってなくてはならなくなっている。</p>

<p>素敵な彼女。<br />
物思いに耽る僕。</p>

<p>手に彼女をすくって「しゃべれる？」と尋ねて、答がないと僕は「ははは」と一人笑う。<br />
「変な人だな」<br />
バスタブに満たされている液体に、僕はうつろに一人ごと。</p>

<p>一人でいるとき、一体彼女はどうしているのか。<br />
僕と二人でいるときは僕がいるから安心だけど、一人でいるときこんな彼女の性質を的確に理解してあげて、それで不気味がらずに介抱してあげる人なんて、僕以外にいるはずがないのだから。<br />
けれど、一週間くらい会わない日とかもあるけれど、きまってへっちゃらな顔して僕の前に現れる。</p>

<p>僕がいなくてもひょっとしたら生きていけるの？</p>

<p>そんなふうに尋ねた事もあるけれど、にこにこしながら笑うだけで、返事らしきものは訊かせてくれない。<br />
本当に可愛い。<br />
彼女にとっては僕が必要だと思っているのは、もしかしたら僕だけなのかもしれないと考える事はすごく寂しいことである。</p>

<p><br />
別れは突然にやってくる。<br />
どうした気の緩みなのか、たまたま僕はその日ポリ袋を用意していなかった。<br />
晴れた日曜日に、僕らは二人で電車に乗って、行くあてもなく旅行した。<br />
手をつないで、きっとこの幸せは永遠のものなんだって安心しながら、二人で色々めぐり歩いた。<br />
いつも彼女は可愛いけれど、その日は特に可愛くて、なぜか何度も彼女の顔をみてしまう。<br />
幸せなのは僕だけじゃないかって、心配で彼女の表情を点検するのだ。<br />
「なに？」<br />
不思議そうな顔をして僕を見返す。</p>

<p><br />
日が暮れだして、夕日に照らし出された見知らぬ街の歩道で、僕はずぶ濡れのリュックを背負いながら、ぼろぼろ泣きながら歩いていた。<br />
彼女が突然とろけだして、僕は用意をしていなかったから、慌てて彼女をリュックに流し込んだ。<br />
だめだよ、布の隙間から、彼女がじわりじわりとあふれ出すのを、どん底に落とされた気分で、一生懸命に流れ出してしまわないように頑張ったけど、そんな努力は空しくて、僕の指の間から彼女は溢れだして、土の歩道にぽたぽたぽたぽた落ちてゆく。<br />
泣きながら、ごめんごめん、と僕は言うけど、彼女は変わらずほんのりと温かくて、僕の間違いをやさしく許してくれているようだった。</p>

<p>彼女以外になにも入っていない、びしょぬれのリュックサックを、悲しく背負いながら、僕はずっと泣いていた。<br />
諦めて、顔を泣きはらして、電車に乗って家に帰る途中、他の乗客はずぶ濡れの僕を迷惑そうに、ささと場所を空ける。<br />
人目憚らず僕は泣きっ面で、「ごめんごめん」と繰り返す。<br />
不気味そうな顔をして乗客は僕を見ている。</p>

<p>家までの道程がとても長く感じられた。<br />
車窓の景色はもう暗くて、月明かりに照らされた街並みが流れてゆく。</p>

<p>僕はいつのまにか彼女を失ってしまったことを知る。<br />
地面に彼女は吸収されてしまった。<br />
リュックサックも、もう乾き始めている。</p>

<p>いつ涙は枯れるのか、もう永遠に彼女には会えないだろうという決定的な気持ちから、僕は未だに抜け出せないでいるのだ。<br />
僕がいなければよかったのかな。<br />
本当にごめんね。<br />
本当にごめんね。</p>]]>

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